作品紹介Works

障害者

ゆめふる成田 支援棟

千葉県成田市に建設されました障害者支援施設「ゆめふる成田」の中にある1棟で、そこで働く支援員のための建物です。
この建物では、支援員の事務作業・会議・休憩・更衣、来客時の対応などを行います。

日々、利用者と向き合う支援員を想う建物

支援員の働き方は、感情労働と呼ばれます。常に利用者と向き合い、利用者の状態・感情を優先するために、支援員自身の感情をコントロールしています。 そのため支援棟は、支援員が利用者から完全に離れて自身の感情の演出からリセットできる場となるよう、独立した建物となりました。

建物の中でのつながりと外とのつながり

建物の中には人と関わる場所と1人になれる場所があり、建物の外との関係においても視線が入る場所と遮られている場所を考えました。 大きく分けて、ミーティング室・小会議室・休憩室・相談室・更衣室で構成しています。

平面図

柱でゆるく分けられたミーティング室と廊下

ミーティング室は、日々の事務作業などが自由に行え、定期的な24名ほどの大きな会議も行える広さとしています。窓は大きくとり、支援棟の前を行き来する人の姿が見られるようになっています。また、支援員同士のコミュニケーションも大切にという考えから、壁や扉で区切っていません。 廊下と一体の空間になっていることで、お互いの様子を感じながら日々の支援に取り組めるようになっています。

小会議室は、常にオープンなミーティング室の性格とは違った、細やかな会議などが行えるような場所になっています。利用者の方は支援員のことが好きで姿が見えると立ち止まって覗いてしまうため、窓の外には目隠しフェンスを設け視線が中に入りづらくしています。

休憩室

休憩室は、“休憩時間”といってもどんな段階の休憩なのかで、使い分けられるようになっています。 夜勤明けで帰宅する前の仮眠や自然災害などの際に泊まり込むことも考慮し、きちんと横になれる小上がりの畳スペースもあります。小さいけれどゆっくり一人になれる場所です。

また、廊下の突き当りには気軽に会話を交えながら休憩できるスペースを設けました。 玄関から廊下へ入った時に視線が抜ける窓の検討をしていました。その際に、「支援員が一息つきコーヒーを飲んでいる姿を、自由に食べたり飲んだりできない利用者に見えてしまうと、辛いものがある」という話をお聞きし、視線は抜けるが手元は外から見えにくいように配慮し窓を少し高い位置に設計しています。

1本の柱

支援棟の真ん中には、柱がトンと1本据えられており、それを大黒柱と呼んでいます。 プランを考える中で、生まれました。 玄関から中へ入り視線が窓から外へ抜けると同時に、この柱に目をとめることで、気持ちを切り替えるきっかけになってほしいと思っています。 また支援員は、利用者の住まいである「春・夏・秋・冬」棟で中心となって、働かれます。 日々利用者に寄り添いにこやかに支援されている姿は、利用者だけでなくゆめふる成田全体を支えており、この柱のようになくてはならない存在なのだという想いを込めています。

玄関から廊下へ入ると、窓の外と柱が目に入る。

建築主
社会福祉法人菜の花会
所在地
千葉県成田市猿山
用途
障碍者支援施設(事務所)
構造
木造
階数
地上1階
敷地面積
25,402.41㎡(ゆめふる成田全体)
建築面積
214.63㎡
延床面積
190.46㎡
竣工年月
2023年8月
担当者
川﨑優里