設計コンセプトConcept

障害者

知的障害者の特性に合わせたすまいのディテール 4
   <感覚への工夫>

ゆう建築設計では、知的障害者の特性に合わせてさまざまなディテールを考えています。

既製品があれば様々なメーカーの商品を比較し、知的障害者の特性に合わせて使えるディテールか使えないディテールかを考えます。使えるディテールの既製品がなかれば一から仕組みを考え、実験を重ねながら知的障害者の特性に合わせたディテールを作ります。

ここでは、ゆう建築設計で考えた様々なディテールをシリーズでご紹介します。
第4回は、感覚への工夫です。

(1)冷たさ対策 (2)音(天井の工夫 吸音対策) (3)浴室暖房 
(4)調光・色温度 

 

(1)冷たさ対策

1. 接触温熱感
• 接触温熱感は、熱伝導率が小さく、熱容量の高い素材の床材ほど接触温熱感に優れている(ヒヤッとしない温かく感じる)。
• 床に座り込んだり、床を這って移動する利用者がいる場合、冬場体を冷やさないように配慮するため選定する。

 

接触温冷感グラフ お風呂専用長尺シート
コルクタイル フローリング

 

• つばを床に並べる利用者がおられ、掃除してもコルクタイルの目地に入ったつばが取れない
 ため匂いがする。

■対策
• つばを床に並べる利用者がいる娯楽室のみコルクタイルを撤去し、清掃性の良い目地の
 少ない長尺シートに貼り替える。

 

改修前の娯楽室の状況
コルクタイルを撤去 長尺シートに改修後

 

(2)音(天井の工夫 吸音対策)

1.吸音対策
• 知的障害者施設はカーテンや絨毯などの音を吸収する物が少ないため、吸音対策をすることで、耳障りな
 反響音を吸収し、静かな室内環境にする必要がある場合がある。

■吸音材料
• 孔あき石膏吸音ボードと岩綿吸音板(ロックウール化粧吸音板)は、周波数により音の吸収率が異なる。

 

吸音材の周波数毎の音の吸収率

 

孔あき石膏吸音ボード 岩綿吸音板
人の声の周波数 孔あき石膏吸音ボード

 

(3)浴室の暖房

1.浴室の暖房
• 浴槽のない機械浴槽のみ設置する浴室の場合、冬体への負担を減らし、ヒートショックを起こしにくくするため暖房装置が必要。

■3つの暖房設備
• ①床暖房:最適な暖房システム。床から部屋全体を温める。イニシャル・ランニングコストが比較的高く
 なる。
• ②放射暖房システム:表面温度が30~35℃と比較的低いため、壁の床面近くに設置でき熱効率が良い。
• ③遠赤外線ヒートパネル:表面温度が120℃程度まで上がるため、安全を考えて天井に設置。コストは
 比較的安い。ただし、立って作業するスタッフの頭や顔が熱くなる。

 

改修工事の暖房システムの検討表

 

遠赤外線ヒートパネル 放射暖房システム


(3)調光・色温度

1.調光調色
• 視覚過敏の方に対する照明の提案。
• 発達障害及び自閉症の感覚について研究をされている大学の先生とお話をして効果について検討していま
 す。

■調光調色型シーリングライト
• 利用者の特性に合わせて調光機能、調色機能を持つ照明を選択することを考える。
• 利用者の特性とコストを合わせて考える必要がある。

 

東芝調光例
東芝マルチカラーの調色例

 

①調光照明 ②調光・調色照明 ③マルチカラー照明

 

各種照明のコスト比較表