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障害者 / 視察報告
フランスの精神・知的障がい者の住まい視察
フランスの精神・知的障がい者の住まい視察
~ディレクター(施設長)と建築家に話を聞く~
ゆう設計では、障がい者施設の計画を多数させて頂く中で、障がい者の方の住まいについて継続的に研究に取り組んでいます。
平成24年、28年に2回に渡りフィンランドの知的障がい者の住まい視察を行いました。今回はフランスの障がい者の住まいについて視察に行ってきました。今回は特に、建物だけでなく計画した建築家にも話を聞きたいと思い、パリ在住のKana Clot Sunayama氏にコーディネーター、通訳をお願いし、事前に綿密なスケジュールを組んでもらいました。
4月11、12、15日の3日間で6つの施設を視察しました。
■視察日程
4/11(月)
建築家:Grégoire Zündel(ズンデル・グレゴワール/建築事務所AZC)
①Résidence Planchette
(FAM(精神、知的混合)+デイケア)
→入居23人(2ユニット/1フロア4~6名×5層)+デイケア60人
ディレクター:Marie-Noëlle BOISSEUX
(ボワッスー・マリー・ノエル/FONDATION AMISDELATELIER)
②Résidence Notre-Dame de Bon Secours
(高齢者、保育園、障がい者施設(工事中)複合)
→高齢者98人+産院+保育園64人+知的、精神障碍者FAM(2017年完成予定)
4/12(火)
ディレクター:CHRISTIAN TOULLEC(トゥーレック・クリスチャン)※③、④の施設長
女性ディレクター ※③の副施設長
→運営法人ファルレは精神障害者施設に特化して34施設を経営
建築家:Philippe VOIRIN + Patrick PUGET
(ヴォアラン・フィリップ + プゲ・パトリック/建築事務所ACTIO ARCHITECTURE)
③Residence PAUL GACHET(MAS(精神障害))
→入居47人(10人×4ユニット+7人ユニット)
④Residence JULES FALRET(FAM(精神障害))
→入居60人(35人4ユニット、他2ユニット)
⑤Residence du DOCTEUR ARNAUD(MAS(精神障害(自閉症含む)))
→入居54人+学生寮併設
4/15(金)
⑥FAM Marichers(FAM(精神障害(自閉症含む)))
→運営法人グループSOSは医療福祉、特養、保育園、薬中・ホームレス受入れなどで
330~340の施設を運営。ただし知的障害はしていない。
視察先リストに、「MAS」や「FAM」といった言葉が出て来ますが、精神、知的障がい者の方が入居する施設は現在4種類あります。今回は、重度の方が対象の「MAS」と「FAM」に絞って視察を行いました。
1.Maison d’accueil Specialisee(MAS):特別受入ホーム
2.Foyer d’accueil Medicalisee(FAM):医療受入ホーム
3.Foyer de vie:生活ホーム
4.Foyer de habergement:宿泊ホーム
フランスでは、2005年からMDPH(Maison departementale des personnes handicapees/県障害者センター)という組織が障がい者関係の唯一の窓口として法により設立され、障がい者の判定、年金額の決定などを行っています。
「MAS」と「FAM」は、元は知的障がい者の方向けの施設でしたが、現在は精神障がい者の方も制度上は 区分なく入居することができます。ただし、症状や相性により知的障がいの方と精神障がいの方が同居することは問題が発生することもあり、現在は施設を運営される法人の考えによって知的か精神のどちらかを 受入れ対象とされるか、症状が安定している人を中心に、細かくユニット分けをしてどちらも受入れるなどで対応されています。
精神障がい者については、自傷、他害があるなど「MAS」でも受入れが難しい場合は治療が必要と見なされ、精神科病棟に移ることになります。今回視察した中では「MAS」でも重度の知的障がいを持っているような方は見受けられなかったので、より重度の知的障がいを持った方がどこにいるのか(病院?)は確認できませんでした。
視察前に、社内で議論を重ね、視察するテーマを設定して見に行きましたので視察結果をご紹介します。
■視察前のテーマ設定と視察結果
またその区分に建築がどう対応しているのか、或いはしていないのか?
また、フランス以外の国の状況、情報については何があるか。
もう一つは、みんなが集まる食堂やロビーと言った部屋の他に、個々人が望んだ時に利用できる楽しむ為の部屋(カラオケルーム、演奏ルーム、ジャグジー浴槽、マッサージルーム、プール、美容室等)が施設の中にあったことです。個人の居場所が居室で確保された上で、みんな集まる部屋とは別に、好きな時に選択できる部屋があること、この二点は今後の計画に活かせると思いました。
勿論、日本とフランスでは社会制度も予算も土地事情も違いますが、居室の広さを全体の面積をやりくりして1㎡でも増やすこと、楽しみの部屋を一部屋でも提案し、つくることは今の日本の制度の中でも可能と考えます。今回の視察を終えて、障がい者の方々が暮らす生活の場はもっとよくできる、そう思いました。