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病院 / 精神科

医療法人社団 綾瀬病院 増改築工事

密集した市街地での建替計画

 外来棟と病棟が公道を挟んで存立しており、その周辺は民家と共同住宅で囲まれています。既存病院はブロック造+木造で、1970年の病院設立から50年経過しています。そのため、現在の耐震基準に満たない病棟の建替えを契機に、業務の効率化を目指し機能を一体化させる計画としました。病棟には入院患者が在院しているため、居ながら建替えとなります。既存病棟が建つ敷地内で、工期に応じて病床数を減少させ、新築と引越しを繰り返し行いました。

鳥瞰(既存)

鳥瞰(完成イメージ)

工期ごとの病院運営への対応

 着工から竣工まで約2年必要です。工期ごとの病院運営の変化を打合せしながら計画を立案しました。許可病床数は97床です。工事中、病床が一時的に減少することで病棟構成が変わり、その間のスタッフ配置の変更が必要となります。また、工事中でも食堂加算等、加算が取れる状態を作り、病床数減による減収を少しでも賄うことが重要です。
工事手順
【第1期工事】(病床数:70床)
 既存病棟の半分を解体撤去し、病床扱いしていなかった保護室を病床とする。
 食堂加算の面積基準を確保し、既存食堂に間仕切壁を設置し、病室に改修する。
【第2期工事】(病床数:63床)
 病棟跡地に新病院(A棟)を新築し、既存病棟から入院患者の引越しを行う。
 残りの既存病棟の解体撤去に伴い、厨房は弁当による配食とし、作業療法は休止とする。
【第3期工事】(病床数:63床)
 病棟跡地に新病院(B棟)を新築し、A棟と接続させる。
 B棟は外来棟の機能を有しており、これにより、病院機能が集約される。
【第4期工事】(病床数:97床)
 B棟に新設した厨房と作業療法室を稼働させ、A棟のみ使用時に食堂及び配膳室として使用していた部屋を病室に改修する。

(上から)外来受付 1階多床室 個室 食堂・談話室

(上から)外来廊下 2階多床室 特室 食堂・談話室

院内の安全対策

引掛けがしにくい部材を選定したり、大便器へのもの詰め対策等を講じています。
また、保護室の仕様については入念に打合せを行い、決定しました。

住宅街に建つ精神科病院の近隣対策

 閉鎖的に孤立させるのではなく、開放的な病院イメージを作ることを意図しました。歩道を通れば外壁に手が届きそうな距離感の病院から、脱走を試み、また奇声を発する入院患者が起こす周辺住民への迷惑行為に対する物理的な制御と、病院の開放感の獲得は相反しており、その解消を建築で行いました。
■建物周囲
 ・病室と歩道の距離が近いため、建物と歩道の間にある緑地帯に中木を植え、意識として、やわらかに境界が区切られている様を作る
■視線対策
 ・型板ガラスを採用(視線は通らないが、シルエットは感じる)
■声もれ対策
 ・病室内からの声漏れ対策として、病室は遮音性能T-2(2重サッシ)のアルミ製サッシ
 ・保護室は遮音性能T-4(2重サッシ)のアルミ製サッシ

植栽帯を設置し、縦長窓の保護室との間に干渉エリアを作る

歩道から手が届きそうな位置に設置した保護室

建築主
医療法人社団綾瀬病院
所在地
東京都足立区
用途
精神科病院
構造
鉄骨造
階数
2階建
敷地面積
2,063.57㎡
建築面積
1,401.45㎡
延床面積
2,765.45㎡
竣工年月
2019年5月
担当者
河津孝治 , 田淵幸嗣