作品紹介Works
病院 / 精神科
医療法人慈光会 東武丸山病院
~提供する医療の変化に合わせ、病院機能をその都度整備~
2015/03〜2016/01:病棟改修工事(保護室新設工事)
病棟の再編成と今後の病院改修計画の方針により、保護室の設置が多い本館1階を閉鎖し、上階にある保護室の改修と新装を行う方針となりました。今回の計画は、本館2階並びに3階の既存保護室の拡張工事と、病室から保護室へ変更する改修工事です。
■病院の現状(計画時の病床数)
許可病床数269床
病棟構成
北病棟 本館
1階(男性:療養) 1階(男性:一般・保護室6室)
2階(女性:療養) 2階(女性:一般・保護室2室)
3階(男性:一般・保護室2室)
既存建物への対応と使いながらの改修
保護室の必要床面積について埼玉県と協議を行い、9.72㎡~10.00㎡(内法)の面積を確保するように指導を受けました。新装部分の保護室は壁の位置調整により面積の確保はできますが、既存保護室の面積を指導通りに確保しようとした場合、隣接する病室(6床室)のベッド数を減らし、一部を保護室に取り込まないと面積の確保が出来ませんでした。そのため、埼玉県及び病院を管轄する保健所との協議を重ね、既存保護室より少しでも面積を拡張させるという条件で合意が取れ、保護室背面にある観察廊下部分を無くすことで、既存建物の構造上、最大の保護室面積を確保しました。
既存保護室はスタッフステーションに隣接してありますが、新装保護室はスタッフステーション前の廊下を挟んだ病室を改修する計画とし、改修範囲を分ける計画としました。病院を使いながらの改修であり、改修に伴って保護室を閉鎖することができないため、保護室が使えなくなる状態を作らないことを大前提と考え、保護室を分けることで病院の合意が取れ、改修範囲を分けることとしました。
既存図
改修図
仮設検討時のスケッチ
運用に支障がない仮設計画(工事手順)を立てることは、医療の継続性を担保するうえで非常に重要です。
保護室の仕様決定
室内の設えは保護室使用で整備しましたが、入口前に小さいながらもデイルームを設け、患者の症状に応じて施錠する扉を決め、段階的な使い方を想定したプランとしました。運用方法とともに、設備機器の選定も重要です。ここでは、衛生機器比較表を作成し、一般的な陶器の便器とFRP製の便器の比較、及び洗浄ボタンや水を止めるバルブの仕様等の特徴を列挙し、病院側と使い方の打合せを重ねました。
患者の受け入れ態勢や保護室を使用する患者の症状を聞きながら、病院が求める適切な仕様を決定していきました。また、保護室ヒアリングシートを用い、治療的見地及び経営的見地からの保護室の位置付けや保護室へ移動する際の治療の流れ、隔離期間、保護室での対応等について詳細な聞き取りを行い、計画全体をまとめました。
保護室使用の整理
建築と設備を一体的に考えることで、運用の確認が一目でできます。
扉全閉
個室扉閉
前室扉閉
扉全開
保護室内トイレ
前室手洗い
- 建築主
- 医療法人慈光会
- 所在地
- 埼玉県幸手市
- 用途
- 精神科病院
- 構造
- 鉄筋コンクリート造
- 階数
- 地上4階
- 延床面積
- 283.37㎡(改修床面積)
1階:108.09㎡
2階:87.64㎡
3階:87.64㎡
- 竣工年月
- 2016
- 担当者
- 田淵幸嗣