作品紹介Works

障害者

今川学園グループホーム 新築工事

南側外観パース

重度対応型のグループホーム

今川学園グループホームは、2階に重度の入居者が2 名、3階に中・軽度の入居者が5 名入居される女性7人の重度対応型グループホームです。既存の建物では、入居者の重度化や高齢化に合わせて可能な限りの改修やリフトの導入など様々な試みがなされていましたが、大掛かりな改修ができないため、重度化や高齢化した入居者が生活を続けることが困難な状況になっていました。今回のグループホームは、このような高齢化や重度化した入居者がグループホームで住み続けることが出来るように、また世話人が利用者の支援をしやすいように計画されています。

2階に入居される2名の重度の入居者の心身の状況

【Aさん】てんかんを持つ重症心身の入居者。てんかん発作がいつ起こるか分からないため常時見守りが必要。全介助が必要。

【Bさん】ほとんど車椅子での生活。つかまり立ちが出来るものの入浴や排泄介助が必要。

AさんとBさんの個人に合わせた計画

2階はこの2 名の入居者に合わせて計画しています。個人に合わせて計画すると、その人は使い易くなりますが、人が変わると使いにくくなるというデメリットがあります。それでもこの2名の重度の入居者がグループホームで生活してもらうため個人に合わせて建てるという事業者の強い思いで実現しています。

(左)和便器を改修した洋式便座(右)浴槽の上に乗せたリフト

テーブルに座るBさんの様子

Aさんに合わせた見守りがしやすい居室

Aさんの居室は、てんかん発作の予兆を早期に発見するため、日中キッチンや食堂から居室の中を見守れるように計画しています。居室に設けた間仕切りを開放することで、キッチンや食堂から居室を見守れるように工夫しています。宿直室はAさんとBさんの居室の間に挟まれるように配置し、居室の間には同じように間仕切りを設けています。特にAさんの居室は間仕切りを開放することで、夜間でもてんかん発作の予兆を早期に発見できるように工夫しています。

床走行リフトが使えるトイレスペース

既存の建物で行われるトイレやお風呂における介助は世話人さんの力に大きく頼っていました。本計画では、AさんとBさんの介助の安全性を高め、かつ世話人が介助しやすいように、床走行リフトが利用できるトイレスペースを確保しました。Bさんの居室は少しでも介助がしやすいようにこのトイレの近くに配置しています。

Aさんの居室の居室の間仕切りを開放しキッチンから居室を見守る

床走行リフトが使えるトイレ

床走行リフトが使えるトイレスペースの検証

床走行リフトの導入にあたっては取り回しに必要なスペースを検証しながらトイレの大きさを決定しています。Bさんには実際に床走行リフトに試乗してもらい、胴回りの大きな入居者でも利用できる床走行リフトをメーカーと一緒に考えています。

AさんとBさんに合わせた脱衣室

AさんとBさんの着脱衣の介助の安全性を高め、かつ世話人が支援しやすいように、脱衣室に収納式多目的ベッドを設置しました。特にAさんは、立位が取れないため、既存の建物では着脱衣の介助は2人介助が必要でしたが、収納式多目的ベッドを利用することで、1人介助で安全に介助出来るようになります。

(左)リフトの可動範囲を確認(右)Bさんのリフトの試乗

脱衣室に収納式多目的ベッドを採用

ユニットバスの選定

2階の重度の入居者が利用する浴槽は、後付けリフトが設置できるユニットバスを採用しました。採用したユニットバスは、3方介助が可能で入居者の体の状況に合わせて浴槽の移動もできます。知的障がい者が利用するリフトを選定する時のポイントは、その利用者が怖がらずに利用することが出来るかどうかです。選定にあたり、実際にBさんにはリフトに試乗してもらいました。

今は3階の中・軽度の入居者は歩行が可能ですが、今後の入居者の高齢化を見据え、大きさが違う同じ後付けリフトが設置できるユニットバスを採用しました。

(左)Bさんのリフト試乗(右)採用したユニットバス

Cさんに合わせたトイレの工夫

3階に住む予定のCさんは体が大きな方です。既存建物のトイレは幅が狭いため、体が壁に当たってしまいます。思うように体が動かせないと情緒が不安定になり、Cさんはトイレの壁に便をつけることがありました。今回の計画では、Cさんが体を動かしやすいように3階のトイレの幅を通常より1m広げて計画しています。

高齢化を見据えたトイレの工夫

3階には軽度の入居者が5名入居されるため、トイレを2つ設けました。今は車いすを利用されている方がいないため一般的なトイレです。

今回の計画では今後の高齢化を見据え、横並びにした2つのトイレの間の壁を取ることで、1つの車いすトイレに改修できるように計画しています。間の壁は改修がしやすいように天井下で壁を止めています。

(左)Cさんのために幅を1mに広げたトイレ(右)間の壁を取り車いす対応トイレに改修が可能

1階玄関:車いす利用者に配慮した段差の無いバリアフリー仕様。

1階廊下:車いす利用者が行き交うことを考慮し廊下幅を広げている。

2階食堂:世話人が食事を作りながら食堂を見守ることが出来る。

2階共用洗面:重度の入居者が利用する洗面は、車いすに合わせ高さ調節可能な洗面を設置。

3階共用廊下:軽度の入居者の高齢化を見据え、廊下に連続手摺を設置している

3階共用洗面:軽度の入居者の高齢化を見据え、洗面の1つを車いす対応にしている

建築主
社会福祉法人 今川学園
所在地
大阪府大阪市
用途
共同生活援助(グループホーム)
構造
鉄骨造
階数
地上3階
敷地面積
176.82㎡
建築面積
123.30㎡
延床面積
369.36㎡
竣工年月
令和元年8月
担当者
竹之内啓孝