作品紹介Works

病院 / 透析

岡山中央病院 東館

右手前が増築した東館。2階:産科、3階:透析、4・5階:回復期リハビリテーション病棟

地域医療支援病院として岡山市の急性期診療医療を担う「岡山中央病院」と回復期・慢性期医療、透析治療を行ってきた「岡山中央奉還町病院」。この2病院の機能が1か所にまとめられ、これまで以上に継ぎ目のない医療ケアの提供が可能となりました。
産科病棟が「バースセンター」としてリニューアルオープンし、回復期リハビリテーション病棟と透析センターがより快適な環境を整え移転すると共に、これまで病院が抱えていた動線の課題を解決する好機として内視鏡センター、救急センターの改修工事も同時に行いました。
今後は20 年以上経過した既存部分の修繕と、患者様にとってより使いやすくなる改装を計画しています。

全体配置図

エントランスに入ってすぐのラウンジ
透析・リハビリの送迎の待合のほか、透析 患者の食事スペースにもなる

やすらぎと楽しみ

この建物はよくホテルのようだと言われます。もちろんホテルを作ろうと思ったわけではありませんが、やすらいだ気持ちで過ごしてもらいたいと願い設計をすると結果的にそのように感じられるものとなりました。
「病院を訪れる人に前向きな明るい気持ちになってもらいたい」という病院の考えに共感し、アート作品が映えるアーチのある廊下や自然光の降り注ぐ階段など、楽しみも見いだせるような仕掛けを随所に作っています。
それは働く方に対しても同様で、ミーティング+ 休憩スペースを併設した職員専用食堂はリフレッシュ効果を狙って、他所とは異なる目の覚めるような鮮やかな色使いとしました。

エントランスピロティに掲げられた 白石正子氏による陶壁作品
「生命の輝き」

他とは趣の違うビビットな色遣いの 職員食堂

産婦人科 バースセンター

バースセンターには専用のエントランスがあり、ほかの患者様に気兼ねなく会話や写真撮影を楽しんでいただけます。
エントランスホールには階段から自然光が存分に注ぎ込まれ、その光に導かれるようにして2階へあがると、厳重なセキュリティがかけられた病棟の入口があります。新生児の面会は病棟に入ることなく専用のコーナーで窓越しに行われ、LDRの待合も病棟外からアクセスできるようにしています。

LDRは4室と褥室(入院室)の間にはスタッフフルームを配して、職員動線の効率化と同時に出産時の発声音が響くのを考慮しました。
また病棟には、小さなお子さんのいるご家族でも揃って安心してお見舞いに訪れることが出来るキッズルームのほか、妊婦同士のコミュニケーションの場ともなるデイルームや祝膳などをいただくレストランなど、ほかの病棟にはない機能が備えられています。
バースセンターのデザインは落ち着きと可愛らしさが同居したような、幅広い年代の女性に好まれるものとしました。色柄に富んだ褥室はお好みに合わせて選択していただくことができます。

バースセンター専用エントランス
吹き抜けから祝福をしているかのような光がそそぐ

デイルーム 妊婦同士の日常的な交流の場。デザートビュッフェなども計 画されている。アーチ型の窓の小部屋は祝膳などに利用されるレストラン

LDR専用待合。出産の無事を願う祈りの空間 をイメージ

産科1 床室。30㎡とゆったりしている。シャワー・トイレを完備。
調乳も行えるミニシンクを備えている。

回復期 リハビリテーションセンター

70 床の病棟は景色のよい4・5 階にあります。一人当たり10㎡あるゆったりとした病室は、充分な収納量の家具で仕切られた半個室風になっています。
天井走行リフトのある病室ではベッドからトイレ・浴室までリフトでの移動が可能で、患者・介護者の両負担を軽減することができるようになりました。
廊下には歩行訓練用の目盛を入れたり、屋内階段は段差を緩やかにして病棟での日常的なリハビリのための工夫を行っています。
そして屋外には、階段やスロープ・不整地といった多様な障害を想定した屋上リハビリ庭園を設けました。安全に外の空気を感じることのできるこの庭にはハーブやブルーベリーといった食用の植物が植えられ園芸リハビリとしても利用されています。

1 階のリハビリテーション室では外来リハビリも行われます。床の貼り分けや天井意匠を工夫し、大空間でありながら変化に富む活発な印象の空間としました。

病棟には2つのステーションを設けている

個室風4床室  間仕切り家具には明り取り、掲示板、鍵付き引出しや冷蔵庫収納など細かな工夫が詰め込まれている

病棟内にあるリハビリ庭園  階段・スロープ・不整地・園芸スペースなど
多様なリハビリプログラムに対応する

1 階リハビリテーション室
天井走行のリフトを使った歩行訓練等を行う。
奥行のある部屋 だがトップライトからの採光で明るい空間となった

透析センター

長く通い続ける場所のため、主張しすぎることない落ち着きのある上品な空間にしています。比較的高齢の方の利用が多いこともあり、清掃性を満足させた材料でありながら日本的な色柄を選定しました。

気流を最小限に抑えた空調や、まぶしさに配慮しリラックスできるような照明配光計画など患者の治療環境を第一に考えています。各ベッドには一人ずつ手元でコントロールできる調光スイッチを設けました。

プライバシーの確保と飛沫感染対策として各ベッドは低いパーテションで囲われています。

複数ある島状のスタッフステーションからの視界は良好でそれぞれ受け持ちの患者を効率よく見守りすることができます。
3室用意された感染対策個室には透析室に入室することなく外部から直接、ほかの患者とは別のエレベーターを利用してアクセスできるようにしました。透明なパーテションを開放すると一般ベッドとしての利用となります。
そのほか完全個室の特別室も4室用意されています。

見通しの良い透析室  グレアレスのダウンライトや間接照明といった
まぶしさに配慮した様々な照明を組み合わせている

ベッド間隔はゆったり2.2 m

四方カウンターのスタッフコーナーか らは全方向の見守りが可能
カートやタブレット、モニターの配置は綿密な打ち合わせにより決められた

透析室から感染個室をみる。透明なパーテションは開放もできる

建築主
社会医療法人 鴻仁会
所在地
岡山県岡山市
用途
病院
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上5階建
延床面積
8696.85㎡(増築部分)
竣工年月
2020年9月
担当者
河津孝治 , 河井美希