作品紹介Works
障害者
社会福祉法人 福知山学園 新みわ翠光園 建替工事
東側正面外観
高齢障害者特化型入所施設 新みわ翠光園
新みわ翠光園は、平均年齢が70歳を超えるユニットを持つ入所定員70名+短期5名の入所施設です。重度の障害者が多く、利用者の高齢化もかなり進んでいます。本計画は、ご利用者の安全、安心で豊かな生活を支え、働くスタッフの負担を減らし誰もが働きやすい環境を実現するための建替え計画です。
3つのユニットと入居者像
新みわ翠光園は、最重度、女性、男性の3ユニットに分かれています。
最重度ユニットが平均年齢が70歳を超えるユニットで、かなり高齢化が進んでおり、年齢的な面、基礎疾患やてんかんをお持ちの方がおられます。
女性ユニットのご利用者は、ご利用者の特性に合わせて、活動的な方とゆっくり過ごされる方に分かれて日中過ごされます。
男性ユニットのご利用者は、自立歩行が可能で比較的活動的に日中過ごされます。
3つのユニットと入居者像
高齢障害者に特化した建築計画のポイント
①高齢障害者の生活を支える工夫
・開放型の食堂兼デイルームと食堂兼デイルームに併設された2人部屋居室
2階の最重度ユニットは、身体的に重度の方やてんかんをお持ちの方など、生命に関わる体調の急変を早期に発見するため、見守りがしやすい開放的な食堂兼デイルームを計画しました。高齢化が進むと入居者の状況も変化します。入居者が食堂にいる状態で食事の準備を行っても盗食や時間前に食事を開始してしまう事がないため開放的な食堂計画となっています。
活動に疲れた利用者が自室のベッドで静養している時も、食堂兼デイルームからスタッフが見守れるように食堂兼デイルームに併設するように2人部屋居室を計画しています。
・「リビングケア」
食堂兼デイルームに併設したスタッフルームには、食堂兼デイルームより多くのスタッフの目が行き届くように、見通しが良い見守りがし易いカウンターを設置しています。
このように、ご利用者の安全に配慮された食堂兼デイルーム、2人部屋居室、リハビリスペースを含む一体的な空間で、食事、余暇、リハビリなど日中の活動をゆったりと行なうことを福知山学園では「リビングケア」と名付けています。
開放型の食堂兼デイルームと食堂兼デイルームに併設された2人部屋居室
スタッフルームの見通しが良い見守りがし易いカウンター
・看護師と支援員が一体化して業務を行うスタッフルーム
本計画の2階に医務室と言う部屋はありません。看護師も日常的な業務を最重度スタッフルームで行うことで少しでも多くのスタッフの目が食堂兼デイルームに向くように計画されています。
看護師と支援員が一体化して業務を行うスタッフルーム
②高齢障害者の特性に合わせた支援のしやすさへの工夫
見守りセンサー
天井走行リフト
・見守りセンサーの導入
目が届きにくい居室でもプライバシーに配慮しつつ見守りが出来るように見守りセンサーを導入しました。
居室で転倒などの危険動作を検知すると受信端末に通知がきます。
更に、利用者に合わせて危険予兆動作として起き上がりなどの動作を設定すると、その動作も検知すると受信端末に通知がきます。
このように、危険予兆動作が通知されることで重大な事故の未然防止に繋がると共に、スタッフの負担低減にも繋がります。
・天井走行リフトの導入
スタッフの腰痛予防、負担低減のため、可能な限り天井走行リフトを使って車椅子の移乗が出来るように次の部屋に計画しています。
・最重度ユニット:2人部屋居室6室、個室3室、トイレ5ブース
・女性ユニット:個室3室、トイレ1ブース
・ユニット共用:特殊浴室脱衣室に2ヶ所
・ユニットの特性に合わせた3種類の集合トイレ
失敗された時、ご自分で始末しようとして汚れを拡げてたり、車イス上で既に失敗された便が衣服に滲み出ていたり、滲み出していない場合でも汚れを拡げることなく紙パンツやパットの交換ができないことが良く起こります。
新みわ翠光園ではユニットの特性に合わせて次のように3種類の集合トイレを計画しています。
・男性ユニットの集合トイレ
立位が取れる方が利用する洗体スペース。
トイレブース外に設置。
・最重度ユニットの集合トイレ
立位が取れない方が利用する洗体スペース。
トイレブースの内に設置。
・女性ユニットと最重度ユニットの間の集合トイレ
上記の両方の洗体スペースを設置。
・ユニットの特性に合わせた3種類の浴室計画
利用者の特性に合わせて、大浴槽、機械浴槽、個浴の選定。機械浴槽はスタッフの腰痛予防、負担低減のために導入しています。入浴の際に失便されていたご利用者の洗体スペースを浴室内に設置し、特殊浴室の脱衣室には天井走行リフトを設置しています。
・男性ユニット浴室
大浴槽とADL浴槽(酒井医療ホーミィイース)。
・最重度、女性ユニット共用浴室
大浴槽と個浴を設置。
・最重度、女性ユニット共用特殊浴室
仰臥位浴(OG技研ジュスト)とADL浴槽(酒井医療ユニバス)を設置。
左:立位が取れる方が利用する洗体スペース
右:立位が取れない方が利用する洗体スペース
上:男性ユニット浴室
下:最重度、女性ユニット共用特殊浴室
③利用者の特性やスタッフの支援に合わせたすまいのディテール
新みわ翠光園では、利用者の特性やスタッフの支援に合わせたすまいのディテールを考えています。
・ 製作家具(テレビ収納、コップ準備収納、髭剃り収納など)
・ ステンレス加工品(足湯、ステンレス手洗い、ポータブルトイレ流しなど)
・ いたずら対策(煙感連動排煙窓、リモコンスイッチ)
・ 堅牢建具(堅牢建具、床振れ止め、ソフトクローズ無し、ベッド移動有り、枠の車いす対応)
・ 天井:吸音ジプトーン
・ 壁:塗装とクロス
・ 窓:アクリル対応、鍵付きクレセント及び開放制限ストッパー(消防煙感対応)
・ 屋外利用者玄関:飛び出し対応
■その他の写真
上:テレビ収納
下:足湯
個室
2人部屋居室
リハビリスペース
女性ユニット側 食堂兼デイルーム
女性ユニット 娯楽室
男性ユニット 食堂
男性ユニット 娯楽室
利用者専用 西側テラス
- 建築主
- 社会福祉法人 福知山学園
- 所在地
- 京都府 福知山市
- 用途
- 児童福祉施設等(障碍者施設入所支援)
- 構造
- 鉄筋コンクリート造 一部 鉄骨造
- 階数
- 地上2階
- 敷地面積
- 4877.62㎡
- 建築面積
- 2470.89㎡
- 延床面積
- 4409.49㎡
- 竣工年月
- 令和4年6月
- 担当者
- 砂山憲一 , 竹之内啓孝 , 池野雄貴 , 船井亜由美 , 丸川景子