作品紹介Works

その他

増田医科器械 京都WEED SPD倉庫

南立面

医療総合商社の新物流拠点

 増田医科器械は、京都を起点に医療機器関連・医療用ガスを販売する総合商社として出発し、現場の要望に応える中で事業を拡大してこられました。現在は近畿一円でMRI・内視鏡・手術台等の精密機器から消耗品に至るまで医療・理化学機器全般を幅広く販売し、納品後のメンテナンス、アフターフォローまで手掛けられています。

 今回の計画では、契約先病院の医療材料を、発注から消費まで管理する院外型物流システム(以下、SPD)倉庫の拠点を本社近くに別棟で拡大整備します。SPD倉庫はグループ企業である京都WEEDが担いますが、WEEDには「雑草」という意味があり、社名には「雑草のように逞しく生き抜く会社」という想いが込められています。

 倉庫が主用途の建物ではありますが、契約先病院の大切な医療器材を預かる流通の拠点 として、機能とコストの要求を満たしつつ、シンプルで力強い、周囲の自然に馴染む色と形の建物をつくろうと考えました。以下、計画時に考えたねらいです。

外部環境に対する佇まい

 計画敷地は南は大通り、西は緑豊かな児童公園に面する角地で、東は駐車場と三方に開けた立地にあります。倉庫面積をコストを抑えて効率的に確保するために建物の骨格はシンプルに総4階建てを基本形としました。

 北面は日影規制がかかる地域のため、建物を道路側に寄せる一方で、見通しが必要な1階角地はピロティで引きをつくるなど機能的、法規的に必要な要素でボリュームを付加したり引き算したりすることで建物表面に凹凸をつくり出しています。

 特に4トン車が出入りするトラックヤードと人が出入りするピロティが隣り合う公園側立面は天井の高さ、仕上げの密度、スケールの切り替えを慎重に調整しデザインしました。

大通りからの遠景 

西立面 奥行があるトラックヤード庇はポリカ折板を併用

1階荷捌き 柱下部は台車衝突時の保護とアクセントを兼ねたクッション付き腰貼

わかりやすく気持ちのよい倉庫

 倉庫の内部空間として、シンプルで手入れがしやすく、物の把握がしやすいこと。それと 同時に人が動き回り、一定時間滞在する空間として耐えうるものであることの両面から仕上げを検討しました。

 コストを抑えるために仕上げの種類(工種)を絞り、工事手間を減らすことを考え、 床はコンクリート素地の研磨仕上げ、壁は外壁パネル素地に塗装、天井は仕上げを貼る場合、構造材をあらわしにする場合共通で白系の明るい色目とし全体が 白から薄いグレーまでの明るい色調でまとめました。

2階倉庫 右手草色の壁は広い空間の中でトイレの位置を知らせるアクセント

3階倉庫 中央奥縦動線付近に採光・換気窓を効果的に配置

レイアウト自在で拡がりのある執務スペース

 1階と4階には倉庫に隣接して事務部門があります。1階は荷捌きスペースと連携するための事務所、4階は倉庫全体を統括する事務所になります。

 4階の事務フロアは最上階である利点を活用し、屋根に設備機器を載せない計画とし、 鉄骨梁の架け方を工夫することで30m×19m合計570㎡の面積を無柱空間としました。この空間は人員増や運用方法の変更など将来にわたる可変要望に応えたもので、床はトイレを除き全面OAフロア、建築による間仕切りは最小限かつスチールパーティショとし、家具の設えによって空間の粗密・目線を調整し、執務、打合せ、喫茶などの場を適宜ゾーニングします。

4階執務スペース レイアウト変更を見越して天井、照明もシンプルに 左手奥は喫茶コーナー

4階喫茶コーナー 腰は杉の下見板貼、床は木目で雰囲気を合わせつつ耐久性を考慮してビニル床タイル

階段室床は木材(ナラ積層材)で計画 雰囲気の切り替えに明るめの内装とし採光通風窓を計画

敷地北面 建物に必要な諸機能、設備を密度を上げて計画

東立面 建物の形を在りのままシンプルに見せることを意図し窓、材料、色を選定

隣の公園からの景色 緑との相性を考え外壁はマットな仕上を選択

トイレ

風除室

南立面 夜景

写真撮影 ヴィブラフォト浅田美浩

建築主
増田医科器械
所在地
京都市伏見区
用途
倉庫・事務所
構造
鉄骨造
階数
地上4階建
敷地面積
1,900.41㎡
建築面積
1,313.10㎡
延床面積
4,633.92㎡
竣工年月
令和4年(2022年)8月
担当者
清水大輔