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高齢者

社会福祉法人 大吉会 キャンベルホーム ユニット化改修工事

改修後 食堂兼共同生活室 内観

計画概要

 キャンベルホームは2002年4月に開設された特別養護老人ホームで、従来型多床室の特養80名+ショート20名の施設になります。本計画は、いわゆるユニット化の改修工事になります。改修の目的は主に2つあります。第一は、多床室を全室個室化し、入居者の個性やプライバシーを確保するためです。第二は、少人数のユニットに分かれた生活空間を提供することで、入居者一人ひとりの生活リズムを守り、自立した日常生活を送れるようにするためです。またユニット化により経営的に安定することになります。

改修前の部屋の配置

 改修前は、従来型の特養であり、一続きの大きな食堂兼共同生活室に面して居室が配置されていました。生活は東グループと西グループの2つに分かれ、各々グループにスタッフステーションが配置されており、従来型特養でありながら2つのグループに分かれることで、比較的小規模な生活単位になるように運営されていました。  居室は、基本的に多床室が多く、4床室は建設当時としてはめずらしく凸型で、準個室の各々の部屋に採光が入るよう工夫されており、部屋と部屋の間が建具で間仕切られており上部欄間部分がオープンであるものの一定のプライバシーが確保されていました。

改修前 4階平面図(従来型特養)

改修後の部屋の配置

 改修後は、ユニット型の特養であり、西ユニット、中央ユニット、東ユニットの3つのユニットに分かれるように計画しています。スタッフステーションは、西ユニットと中央ユニットの間に1か所、中央ユニットと東ユニットの間に1か所、3つのユニットに対し計2か所配置しました。
 居室は、全室個室です。ユニット化の改修工事は、4床室を個室に分ける際、廊下側の個室の採光が取れないためユニット化できないことが多いのですが、キャンベルホームは多床室でありながら、準個室の各々の部屋が窓に面するように計画されていたためユニット化することが出来ました。

ユニット改修前 2階平面図

日中の見守り

 入居者は今の生活スタイルと同じく、食堂兼共同生活室で日中生活され、寝る時に居室に戻ります。一人で部屋に居るより、みんなと一緒の方が生活に張りがあり楽しく生活できると考えています。スタッフは食堂兼共同生活室で入居者のそばで一緒に過ごして、入居者を見守っています。
 スタッフステーションは2つのユニットの間に配置されており、ユニット同士のスタッフの連携が取り易いように計画しています。スタッフステーションに食堂兼共同生活室を見渡せるカウンターを設けることで、事務作業を行っている時でも食堂兼共同生活室を見守ることが出来るように計画しています。

15人以下ユニット採用の理由

 計画当初は、すべてのユニットを15人ユニットで考えましたが、実際に必要となる人員数が読めないため、法人として既に経験のある10人ユニットとしました。夜勤者の数も現状と同じ5人となるように2ユニット1グループで20人の計画としました。
 しかし、既存改修のためプラン上どうしてもショートが20床ある3階に10人ユニットを2つ作ることが出来ず、結果ショートを2床減らして8人ユニットを1つ作り、更に対となる12人ユニットを2階に作ることで2ユニット1グループで20人となるように計画しました。このため15人以下ユニットを採用することになりました。

改修後ユニット構成模式図

夜間の見守り

 スタッフは夜間の定期巡回を6回行っています。スタッフは定期巡回の時以外、食堂兼共同生活室を見渡せるスタッフルームで事務作業を行いながら居室を見守ることになります。
 本計画はユニット型特養であり、夜勤の人員配置基準は20対1以上かつ2ユニットに1人配置が必要になります。特徴的なのは、2ユニット1グループの組み合わせ方が階を跨ぐところにあります。仮に上下階で夜勤の2ユニットが認められない場合、夜勤者は4階に2人、3階に2人、2階に2人、計6人必要となり、夜勤者の数が従前より1人多くなり人員的に厳しくなります。このため、階を跨いで2ユニット1グループになるように行政と協議を重ねて計画を進めました。

夜勤者の負担低減のため見守り機器を導入

 夜勤者の負担低減のため、シート型の生体センサーを導入することになりました。検討当初は、行動分析型カメラ+生体センサーの見守り機器と見守り機器メーカーが持つ呼出機能のみの簡易ナースコールの組み合わせを検討していましたが、コスト的にシート型生体センサーと従来型のナースコールの組み合わせの方が価格を抑える事ができ、また、職員のカメラに対するイメージが良くなかったため、シート型生体センサーを導入することになりました。

建築主
社会福祉法人 大吉会
所在地
埼玉県 越谷市
用途
特別養護老人ホーム、短期入所
構造
鉄筋コンクリート造
階数
地上4階
敷地面積
2,933.30 ㎡
建築面積
1,659.51㎡
延床面積
5,050.85㎡(内 改修面積 3,119.83 ㎡)
竣工年月
令和6年3月
担当者
竹之内啓孝 , 村上智可