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増田医科器械 大阪支店 建築計画

北立面(将来交差点となる面からの風景)

医療総合商社の新支店計画

近畿一円で医療機器関連・医療ガスを販売する総合商社、増田医科器械の大阪支店建築計画です。
2022年に京都にグループ会社である京都WEED SPD倉庫が完成したのに続いての計画で、支店としては2017年に完成した滋賀支店に続く2店舗目となります。

商社の支店として事務所機能と物流機能を併せ持つため高速道路へのアクセスは重要で、今まさに高速道路に通じる道路整備計画が進行中の将来交差点角地となる場所に土地を取得されての計画です。将来の利便性が確実に見込める一方で、道路としての整備は途上にあるため周辺にインフラと呼べるものがほぼなく、しかも上部に電気の高圧線が通っているため建物高さ、施工条件も制約を受けるという難条件を1年近くかけてクリアしての工事着工です。

ここでは幹線道路の交差点に物流の拠点をつくるという与条件について計画時に考えたねらいを書きます。 前面道路は今は直線ですが、将来は交差点となり人目につきやすい場所となること、また敷地が隅切り形状のために建物形状もなりゆきで角度がつくことを利用して、縦格子で外観上の焦点をつくりました。次にそこから左右に翼を拡げるように庇が雁行していき3階両端部に消防隊進入用のバルコニーの位置を合わせることで建物のボリューム感をやわらげるという見せ方を考えました。倉庫という用途は利用効率を考えると形はシンプルな箱がよいのですが、一方で人が使う建物として見た目やスケールをなじませていくための工夫です。

懐の深い庇下空間

入口正面 乳白折版屋根から光が差し込む

雁行する庇下空間

敷地形状が道路に沿って細長く、かつ若干台形上に角度が開いているため建物を効率よく配置することを優先すると敷地内で大型トラックを切り返して建物に後ろからつける動きが取れないという制約がありました。そこで発想を変えて、道路からトラックが進入し、建物に平行に横付けして荷卸しをして一筆書きのルートで出ていくという動線を設定しました。

トラックヤードの庇下は有効で4mを確保していますが、先に竣工した滋賀支店では庇の奥行5mでも雨の吹きぶりが強い時は入庫入口付近まで濡れるという話があり、建物と敷地形状に角度がついていることを活かして最小の奥行を5mを起点として、敷地の確度に添わせながら庇を雁行させ奥行を深くしていき、最大で8mの懐の深い半屋外スペースを確保しました。完全に屋内化してしまうと設備や仕上げほか建物としてのコストがかかりますが、雨に濡れる心配の少ない開放性の高い空間をコストを抑えて確保するねらいです。

倉庫フロアに窓を設ける。そこで働く人の安心を計画する。

商社の倉庫は基本的に商品を保管する場所なので、日焼けや温度変化など商品の劣化につながりやすい開口部は基本避けるべきものとされています。「もの」を中心に考えるとそうなりますが、私は自分がそこではたらくことを考えた時に、そのフロアに降り立った時、階段を利用する時など、たくさんではないけれどさりげなく空間の手掛かりとなる光や風が抜ける窓があるといいなと普段から考えています。そしてこの開口は、停電や火災など避難が必要な事態が発生した時に非常照明や消火設備を設置した上での心理的な安心感につながると考えます。

写真は、先述の京都WEED SPD倉庫の風景です。この建物を計画する際に「人」が中心の倉庫空間というものを考えて、商品への影響が少なく、人の往来する箇所に絞って効果的に開口部を設けるということをしました。そして、階段室の段板には昇降時の衝撃吸収の機能と雰囲気、気分の切換えを兼ねてナラ材を貼りました。

幸いこの試みは事業主の方の理解も得られたので、同様の試みを今回も計画に盛り込んでいます。

京都WEED SPD倉庫 商品への影響の少ない階段横、トイレ入口脇をねらって開口を設置

設備計画では前回の計画からの使い勝手のフィードバックとして照明エリア分けを竣工後もタブレットで自由に可能な照明システムを採用したり、警備保障と連動して照明、空調の一括オフにする消し忘れ防止をシステムに組み込むなど、はたらく人に使いやすい工夫を盛り込みました。

2024年9月竣工を目指して現場監理中です。 竣工後に写真と共にまた詳しくご報告いたします。

風除室

建築主
株式会社増田医科器械
所在地
大阪府高槻市
用途
倉庫・事務所・駐車場
構造
鉄骨造
階数
3階建て
敷地面積
2,201.80㎡
建築面積
1,434.76
延床面積
3,815.23㎡
竣工年月
令和6年(2024年)9月竣工(予定)
担当者
清水大輔