作品紹介Works
透析 / 診療所
東京透析フロンティア 池袋駅前クリニック
計画概要
東京都豊島区にある透析クリニックの計画です。駅前のオフィスビルに入った立地なので働かれている方や沿線から電車で通われている患者が多いクリニックです。東京透析フロンティアグループは多くの透析クリニックを展開されており、池袋駅前クリニックがグループとして5軒目のクリニックです。オフィスビルの3階1フロア借りて透析クリニックにしています。

平面図
クリニックの運用方針に合わせて
検討を繰り返した平面計画
このクリニックでは他の透析施設との違いとして、透析患者の受入れ方法があります。他の施設では穿刺の開始時間が決まっていたり、ある程度の時間帯が決まっていますが、このクリニックでは患者の希望する時間に来院してもらい、透析を開始する方式(個別方式)で運用されています。
この個別方式で運用する場合、他のクリニックとは異なり患者の行動にはいくつかの特徴が生まれます。
・自分の指定した時間にあわせて来院する
・患者が一斉に行動しない
このような患者の行動などを整理することで、必要な部屋や最適な部屋の広さを確認しながら計画することが重要です。その結果、透析クリニックで一定の面積を占める透析待合や送迎待合をなくしたり、同時利用の少ない更衣室などをコンパクトにしています。
その分、健診や腎臓外来などの外来部門を充実させたり、法人の本部機能を配置したり、診療以外の機能を充実させた計画にしました。
本当になにが必要か、
見直しながら行うコストコントロール
東京透析フロンティアグループは駅前立地を条件に出店を進められています。このクリニックは都心部の駅前なので、働かれている方や透析患者の平均年齢より若い方も来院されています。 患者層に選ばれる要素として、各クリニックでは10床程度の準個室を配置しています。これは他の透析施設の個室・準個室の割合に比べるとかなり多い割合になっています。 準個室は大部屋の透析室に比べれば建設費用はかかります。数が多ければ、コストへの影響も大きくなります。その為、準個室を配置するための目的や患者層を明確にした上で計画することが重要です。目的が明確にできれば、準個室の仕様を検討して計画できます。 このクリニックの準個室の目的は、豪華さでも感染対策でもありません。目的は他の人の目線を気にしないで、自分だけの空間で落ち着いて透析治療を受けられます。 その目的に合わせて、最低限の広さ・扉幅などの条件を整理して計画しています。準個室内にゆとりを持たせるために、透析カウンターは取止め、配管は二重床の中にルートを確保しています。 ただし落ち着いて透析治療が受けられるように準個室を囲む壁を高くしたり、準個室の扉には静音性の高い金物を採用して扉開閉時の音環境に配慮したり、扉を閉めた状態で透析治療を受けられるように、準個室内に見守りカメラを設置するなどの安全対策を十分に行っています。 このような検討作業は準個室だけではありません。多くの項目で目的を明確化し、なにが本当に必要か整理しました。最終的には工事費の高騰化でも、事業予算に余裕をもって工事費を抑えることができました。

既製品を組み合わせた準個室ブース

目的に合わせた準個室

クリニックのエントランス

ゆったりとした外来待合
来院時の好印象と患者の過ごしやすさを求めて
透析患者は病院などから複数のクリニックを紹介された際に、なにを見て決めるのでしょうか。当然、面談した医師やスタッフの印象・クリニックの治療方針なども重要ですが、受付をしてクリニックの中を案内された時に見た空間の印象も非常に重要になります。
印象を良くする方法はコストをかけることではありません。コストをかけなくても、印象が良い空間を作り出す方法はあります。今回の透析室ではベッドの向き・透析カウンター・天井に特徴があります。
ベッドを2列に並べる場合、通常は効率良く配置しようとすれば、中央を通路にして両側にベッドを配置します。ただし今回は透析室の幅に余裕を持たせることができたので、ベッドを背中合わせで中央に配置して両側に通路を作っています。このベッド配置のメリットは、他の患者と対面せず視線のストレスを感じずに治療を受けられることです。
またテナント案件は窓の断熱性能が悪いこともあるので、窓際にベッドを配置すると窓からの冷気の問題がありますが、その問題も軽減されます。
透析室のカウンター高さを標準から55cm高くすることで、背面側の監視装置が見えないので、さらにすっきりとした空間にまとまります。
また透析液の給排水の問題で二重床にして床を上げている分天井が低くなっていますが、極細のライン照明で方向性のある空間にして、天井低さを感じさせない空間としています。また、天井の壁紙をグラデーションで貼分けすることで印象の良い空間に仕上げました。
- 建築主
- 医療法人社団東京透析フロンティア
- 所在地
- 東京都豊島区
- 用途
- 無床診療所(透析)
- 階数
- 3階
- 竣工年月
- 2024年8月
- テナント面積
- 656.00㎡
- 透析ベッド数
- 大部屋30床+準個室10床
- 担当者
- 山崎慎二